SOにはいくつかの種類があることを理解する
前の記事では、ストックオプション(SO)の基本的な仕組みと、ベンチャー企業がなぜこの制度を導入するのかについて解説しました。この記事では一歩踏み込んで、SOにはいくつかの種類があり、その違いによって税金の扱いが大きく変わってくるという点を中心に解説していきます。
SOには大きく分けて、「税制適格ストックオプション」と「税制非適格ストックオプション」、そして「有償ストックオプション」といった種類が存在します。それぞれ税金がかかるタイミングや税率が異なるため、同じ「SOをもらった」という状況であっても、実際に手元に残る利益の金額は制度の違いによって大きく変わる可能性があります。
就活生にとって、こうした税制の細部まで完璧に理解する必要はありませんが、「SO」と一括りにされる制度の中にも複数の種類があり、それぞれ扱いが異なるという事実を知っておくことは、企業からの説明を正しく理解するうえで役立ちます。
特に内定後の条件面談などでSOに関する説明を受ける際には、専門用語が多く使われることも珍しくありません。あらかじめ基本的な種類の違いを頭に入れておくことで、説明をスムーズに理解し、疑問点を的確に質問できるようになるでしょう。
税制の話は堅苦しく感じられるかもしれませんが、将来自分が受け取る可能性のある報酬に直結するテーマです。少し専門的な内容であっても、面倒くさがらずに理解しようとする姿勢が、結果として自分自身の利益を守ることにつながります。
税制適格ストックオプションという優遇制度
SOの種類の中でも、多くのベンチャー企業が採用しているのが「税制適格ストックオプション」です。この制度は、一定の要件を満たすことを条件に、税務上の優遇措置を受けられる仕組みになっています。具体的には、権利行使時には課税されず、実際に株式を売却した際の差益に対してのみ、譲渡所得として約20%の税率で課税されるという特徴があります。
税制適格ストックオプションとして認められるためには、権利行使価格や権利行使できる期間、付与対象者の範囲など、複数の要件を満たす必要があります。例えば、権利行使期間については、付与決議の日から一定の年数の範囲内に制限されており、近年の税制改正によって、設立から間もない非上場企業についてはこの期間が延長される見直しも行われてきました。
就活生としては、こうした要件の詳細をすべて暗記する必要はありませんが、「税制適格」という言葉が、単なる呼び名ではなく、法律上の要件を満たした場合にのみ受けられる優遇措置を意味しているという点を理解しておくとよいでしょう。
税制は毎年のように見直しが行われており、権利行使期間の延長など、スタートアップにとって有利になる方向での改正も近年進められてきました。就活生としては、こうした制度が固定的なものではなく、時代の変化に応じて更新され続けているという点も知っておくとよいでしょう。
こうした税制改正の背景には、日本国内でスタートアップの成長を後押ししたいという政策的な狙いがあります。就活生としては、ストックオプションを取り巻く制度が、国全体のスタートアップ支援政策とも結びついているという大きな視点を持っておくと、企業研究に厚みが出るでしょう。
税制非適格や有償ストックオプションとの違い
税制適格ストックオプションの要件を満たさない場合、「税制非適格ストックオプション」として扱われます。この場合、権利行使を行った時点で、株式の時価と権利行使価格との差額に対して給与所得として課税される仕組みになっており、税率は所得水準に応じて最大で55%程度にまで達する場合があります。権利行使のタイミングでまとまった納税負担が生じる可能性がある点は、大きな違いといえるでしょう。
また、「有償ストックオプション」と呼ばれる仕組みも存在します。これは、権利を付与される役員や従業員が、権利の取得時に一定の対価を支払う形式のSOです。対価を支払って取得することから金融商品として扱われ、権利行使時には課税されず、株式売却時にのみ譲渡所得課税が生じるという特徴があります。ただし、無償で付与される税制適格ストックオプションとは異なり、権利取得時に一定の資金負担が発生する点には注意が必要です。
就活生としては、企業から「ストックオプションを付与します」と説明された際に、それがどの種類のSOなのかによって、税負担のタイミングや金額が大きく異なる可能性があることを理解しておくとよいでしょう。
特に税制非適格ストックオプションの場合、権利行使のタイミングで想定以上の納税資金が必要になることもあります。株式を売却する前に納税だけが先行してしまう事態を避けるためにも、制度の違いを事前に把握しておくことは実務的にも重要です。
面接や内定後に確認しておきたい実務的な質問
SOに関する制度は複雑であるため、就活生が自力ですべてを理解しようとするよりも、企業の担当者に直接質問し、丁寧に説明を受ける姿勢が現実的です。面接や内定後の面談の場では、「付与されるSOは税制適格ストックオプションかどうか」「権利行使価格はどのように決定されるのか」「権利確定期間はどの程度か」といった点を、遠慮せずに確認してみるとよいでしょう。
また、SOの評価額について企業側から提示される数字は、あくまで将来の株価を前提とした試算であることが多く、実際にその金額の利益が確定しているわけではない点にも注意が必要です。楽観的な前提に基づいた試算だけを鵜呑みにせず、複数のシナリオを想定した説明を求める姿勢も大切です。
こうした質問を投げかけることは、決して失礼にあたるものではありません。むしろ、制度を正しく理解しようとする姿勢は、入社後に地に足のついた形で会社の成長に向き合う意欲の表れとして、好意的に受け止められる場合が多いとされています。
また、内定承諾前にSOの契約書面を確認できるかどうかを尋ねてみるのも一つの方法です。書面で条件を確認できる企業ほど、制度運用の透明性が高いと考えられ、入社後に「聞いていた話と違う」というトラブルを避けやすくなります。
こうした確認作業は、企業への不信感からではなく、社会人としてお金に関する契約を丁寧に扱う姿勢の表れです。むしろ、しっかりと質問できる学生の方が、入社後も誠実に仕事へ向き合ってくれると評価されるケースも少なくありません。
税制の仕組みを理解したうえでの企業選び
SOの税制上の違いを理解しておくことは、企業選びにおいて重要な判断材料の一つになります。同じ規模の株式数を付与されるとしても、税制適格ストックオプションであるか、税制非適格であるかによって、実際に手元に残る金額は大きく変わってくる可能性があるためです。
また、税制は法改正によって変更されることがあるため、企業から説明を受けた時点の制度が、将来も同じ形で継続されるとは限らない点も理解しておく必要があります。就職活動の時点で完璧な知識を持つ必要はありませんが、疑問に思ったことは都度調べたり、専門家に相談したりする姿勢を持ち続けることが大切です。
SOという将来のリターンだけでなく、日々の生活を支える年収の実態についても理解を深め、総合的な待遇の判断材料としていきましょう。
税制の細部は複雑ですが、わからないことをそのままにせず、都度調べたり企業に確認したりする姿勢こそが、社会人として制度と向き合ううえで最も大切な資質だといえます。就活を通じてこうした姿勢を身につけておくことは、将来必ず役立つはずです。
ここまで、ストックオプションの基本的な仕組みから税制上の違いまで見てきましたが、これらはあくまで報酬制度の一側面に過ぎません。次の記事で扱う年収という、より身近で分かりやすい待遇の要素とあわせて、総合的に企業の魅力を判断していきましょう。
税制の話は一見遠い世界のことのように感じるかもしれませんが、実際に入社し、権利行使のタイミングを迎えたときには、身近で切実な問題になります。今のうちから基本的な知識を身につけておくことは、将来自分自身を助けることにつながります。
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